したじき
下敷が9枚。
以上、紹介終わり(笑)。
とはいうもののカバ男の分際がそう簡単にエントリーを切り上げるワケにもゆかないので、多少解説を試みてみよう。
これらの下敷は、関東運輸局管内自動車標板協議会という団体が発行し、無料で配布したものと思われる。セルロイドもしくはポリカーボネイトの単板で、B5判両面多色刷り印刷。厚みもあり靭性も高く、下敷としてのクオリティは非常に高い。改訂を重ねていて、発行年月の表記がある版とない版がある。見えている中で最も古い期日は平成6(1994)年3月とあり、それ以前と思われる期日表記のない版も一点含まれている。
これらは次に紹介するクルマ本をごそごそ探していて、本棚の奥から発見したもの。しかしこの手の品は古書店などで取り扱わないし、入手した経緯や時期などまったく記憶に残っていない。
どの下敷にも「関東運輸局管内自動車標板協議会は関東運輸局管内に於ける自動車登録番号標交付代行者及び同製作者で組織している団体です。」と書かれている。つまりこの長ったらしい名前の団体は、関東運輸局の管轄する車検場でクルマに貼るナンバープレートの発給を代行する業者や、プレートの製造業者で結成していた任意団体なのだろう。そしてこの下敷は、彼らが存在をアピールするために作って配った、一種のパブリシティーグッズなのかと思われた。
「官」だの「局」だのずらずらと並べ立てた民間団体は運輸行政のあちこちで見かけるが、どの団体を見ても、いかにも利権擁護団体でございますという胡散臭さが特徴である。実際この協議会も団体名でネット検索などしてみれば、真偽はさておき天下りの受け皿云々をはじめ色々ネガティヴな情報に満ち溢れている。
なにしろ関東運輸局の陸運行政は東京・神奈川・埼玉・群馬・千葉・茨城・栃木・山梨の八州にそれぞれ陸事(陸運支局自動車検査登録事務所)を有し、車検や名義変更などクルマに関するあらゆる事務を行う大規模なものである。そのすべての陸事に加えて軽自動車の検査協会にまでミッチリ食い込んで、ナンバー交付の実務を一手に請け負っていたのがこの協議会なのだろうから、それはそれは大きな利権に違いない。現在では全国自動車標板協議会と発展的に改組しているらしい。
手許にある下敷は、表面に「検査・登録関係手数料」「自賠責保険料」の早見表、裏面には「重量税」「自動車税」早見表が記されているものが多い。そして手数料や租税公課の改訂があるたびに、下敷の方も律儀に改訂新版を発行していたようだ。察するにこれらはクルマ屋や自動車保険を扱う保険会社の事務員などを想定し、書類作成を支援する体のお役立ちグッズ。あのペテンのように複雑怪奇な自動車事務に精通するプロならいざしらず、ペラい聞きかじりと口先だけの私には、残念ながらその真価は計れない。今となっては諸手数料の変遷を知る面白い回顧資料として、それなり価値もあるのだろうか。薄い物なので本棚の片隅に立てておいても邪魔にはならない。
それとは別に、ナンバープレート現物の種々相や車輛との相関を示す絵解き版、道路標識一覧図などの版もある。こちらは陸運行政とは直接なんの関連もないのだが、「あんぜんな自転車の乗りかた」など交通安全の啓蒙的な版もあり、協議会が運輸と警察の相互連携を翼賛するポーズを示している(その割には42-49=死に死苦の番号がやけに目立つ縁起の悪い絵面ではあるが)。私は数字ばかりの早見表なんかより、こちらの方がずっと面白くて好きなのである。
これのおかげで、地元でも頻繁に見かける青地に白文字で「外」「領」「代」と記されたナンバーのクルマなどを私は警戒しなくなった。それらが単なる外交団雇員の乗用車であり、警戒すべきは外交官本人や領事が実際にリヤシートでふんぞり返っている「マル外」「マル領」など丸囲いナンバーの車輛であることを、この下敷で学んだからだ。
ほかにも路面電車の停留所などに立てられた「安全地帯」の道路標識など、関東では大昔に絶滅してしまった懐かしいものも載っている。自分の物なのに見はじめると新鮮で、時を忘れて楽しかった。
画像検索してみると、ネットオークションでは、これらと同じ下敷で平成2(1990)年あたりの版も出品実績があるようだった。なのでこの協議会下敷の時経列的な全貌はいよいよ分からない。現在に至るまで連綿と改訂増刷を繰り返しているようにも思えるし、ほかにももっと面白い絵解き版などがあったのかもしれない。
まあなんのかのと悪評嘖嘖な発行元はさて置いて、下敷自体の目指す処はいたって健全真面目なワケで、思わぬ退屈しのぎで楽しめたところをヨシとしたい私なのであった。
縁があるのかな。も少し集めてみっか(笑)。
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