『カバ男のブログ』には、トップページにだけアクセス解析タグを仕込んでいる。元々FC2ブログというのは自分で改造してゆくのが前提らしく、何もしないとアクセス解析なしの文書を素でアップすることになるのは分かっていた。言うなれば暗闇で目を瞑って歩いているようなもの。しかしそれでは周りが見えない。力一杯投げ上げたエントリーの行方が分からない。だから、せめてトップページがどの程度読まれているのかぐらいはモニターしておきたくて、去年の十月あたりに仕込んでみたのである。
今年に入って文体を変えた。今まで一度も「である調」の文章など書いたことがなかった私である。しかし齢も還暦となり、矜持というかそれなりに重い文体で提示しても良いのかなと『紅白翩翻』を試しに書いて、そのまま続いているという次第。
この文体はいささか断定的高圧的になりがちなので、その点だけは行き過ぎないよう気を付けるようにしている。また文章自体の仕上がりも若干時代を帯びた擬文語体のように化けさせられるので、この際はと努めて古臭い言い回しや慣用句を多用して老人感マシマシに作っているつもりである。おおよそ大正末から昭和初頭、最も憧憬を抱く時代の大衆文学の垢抜けないリズムに乗せて、関東弁を遊ばせられたらと思っている。なので、ネット上に現れる仮想人格「カバ男」のキャラクター、無頼さや時代錯誤、ノスタルジーなどを表現するのに「である調」は適切な文体だったかもしれない。
「本のこと」以外のカテゴリーでは、私自身が現実世界でこれまでに経験してきたエピソードの中からブログに合いそうなものを切り出して、「である調」で懐かし気に語ってゆく。当面はこのフォーマットで続ける予定である。
ではリアルのカバ男はどうなのか。現実と仮想現実の両界を共有する知己というのは多くもないが、察するに、彼らは『カバ男のブログ』を複雑な苦笑いのような面持ちで読んでいるのだろう。Georgeとマヒロの二人にこのブログを覚られていないことは、カバ男にとって最大のラッキーといって過言ではない。
トップページのアクセスが今、ちょっと困ったことになっている。
去年まで『カバ男のブログ』はほとんどアクセスの無いブログであった。逆に誰にも読まれない気楽さから、推敲にも画像にも時間をかけ毎回玉成の意気込みでエントリーを続けても来られたのである。一箇月でトップページのアクセスが合計20件弱だから、連続0件の時も普通にあった。
今年に入ってすぐ、毎日どこかからアクセスされるようになり、0戦が飛ぶ日はなくなった。最初の内は、「ははあ文体を変えたから何事かと見返す人でもあるのだろう」、などと他人事のように感じたものであった。三月になると、3件アクセスがあった次の日に更新もないのに30件などと、不自然な増減が目立つようになる。だが太平楽なカバ男は「段々オレ様主義の布教が進んできたぜ」などと一向気付く気配もなかった。
五月。すでに毎日のアクセス数は二桁が当たり前となり、常時10から90の間をフラフラと漂っていた。しかし、カテゴリー別のランキングは何故かちっとも上がらずに「ずーっと更新サボっててごめんネ!2014-9-20」だの「アメブロに移行します。2016-3-5」だのとっくの昔に捨てられた残骸ブログの間で浮きつ沈みつ。アクセスとランキングの相関関係はないのかと、少しずつ違和感が増してくる。
そして今月。到頭アクセス数が初めての来訪者だけで100を超える日が毎週発生するようになっていた。それ以外の日でも、文書も投入しないのになかなか堅調に推移しているのである。先ほど見たら、今週はいきなり101件からスタートして連日200件に迫るアクセス数。桁違い。異常である。
日別のアクセスを示すダイヤリーが伸びた棒グラフで真っ赤になるのは人気ブログ以外にはあり得ない。しかし、そうかといってこの現象をいつまでも手放しで喜べるほどに、最近知恵の付いてきたカバ男は楽天的でもなくなっている。何故ならば、カテゴリーのランクは依然として件の残骸ブログどもと横並びの体たらくだからなのである。
どう考えても変だろう。毎月倍々ゲームどころの勢いではないのだから、普通に考えれば今ごろ赤丸急上昇かトップぶっちぎり、シャンパンの壜を抱えて赤いカーペットで酔い潰れていなければならないのである。してもう玄関前には執筆依頼の編集者が押すな押すなの戦争状態、おちおち外出どころじゃないハズなのである。だが実際は普段通り(いやさ自粛で普段以上)の静かな暮らし。
「おかしい。何かが、どこかが狂っている」
そこでようやく重い腰を上げ、FC2ブログの解析機能を色々と見はじめた次第。
『カバ男のブログ』突然のアクセス急上昇の原因は、別段私の文章が優れていたからでも、エントリーの内容が注目されたワケでもなかった。畢竟するところ巡回ロボットプログラム「ボット」の仕業なのであった。Googleをはじめとした検索エンジンが情報収集の道具として、ネットの世界に放ったプログラム。コイツが24時間365日休みなく仮想現実の世界を渉猟し、得られた結果を検索エンジンが収集している。そんな仕組みはインターネットの商業利用が始まった当初からあるにはあったっけ。だが、HP『廃墟』の最末期2003年前後でも、ボットは数日に一度きり思い出したように来訪しては去ってゆく、やる気なしなしのプログラムだったと記憶している。
このボットが私のブログを毎日参照していたので、このような仕儀とは相成っていたのである。テキストの文言なのか、あるいは私が意識しない特定のHTMLタグなのか、エントリーの何かに反応したボットが執拗に来訪を繰り返しているとみえる。しかも、検索エンジンや官公署のボットなら古馴染みでもあるが、最近ではシケた弱小プロバイダーまでが生意気に自前のボットを放流しているらしい。してまたボットがボットを呼んで自励的にアクセスを急増させていることが判ったのである。なんのことはない。コイツらを差っ引いちまえば、案の定本当のアクセスなんて相変わらずのペースなのであった。
んへへへへ(やや消沈)。
まあ、これで『カバ男のブログ』を検索するとゴリ山田カバ男の次ぐらいには食いこむようになっちゃってるし、つられて何年も前に残骸化したらしい同名のブログまで上位に迷い出て来たりと笑えている。所詮カバ男族なんかそんなものなのである。
幽霊の正体見たり枯れ尾花。
季節のお題、カバ男のインターネット怪異譚。いかがだったろう。
ふと イヤな予感がして、今まで一度も使ったことのないマイクロソフトのアカウントでメールを開いてみた。
はたせるかな、受信フォルダーには大量の「下手くそな片言の日本語メール」が。